「卵子凍結」も正しく知った上でライフプランを選択でき、多様な生き方が認められる社会へ:岡山大学 中塚幹也先生

中塚幹也さん岡山大学大学院教授の中塚幹也さん
「卵子凍結」について、一度は聞いたことがある人が多いと思います。今回は、昨年放送されたNHKクローズアップ現代+「老化を止める?“卵子凍結”の真実 ~徹底調査!成功率は?リスクは?~」にもご出演されていた岡山大学大学院教授の中塚幹也先生に卵子凍結のこと、そして中塚さんが取り組まれている活動についてお伺いしました。

「卵子凍結」っていつ頃から始まったの?

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__本日はどうぞよろしくお願いいたします。中塚先生は、本当に幅広い活動をされていらっしゃいますが、具体的にどのようなお取り組みをされているんですか?

私は産婦人科医として働いているのですが、日常の治療の中で多く女性が、体外受精などの最新技術で妊娠していく一方で、「妊娠しにくい」「今は妊娠できない」女性も多いことが気になっていました。身体的な医療だけの問題ではなくメンタル面、また社会的な環境も影響しているのでは? と思い研究の幅を広げていき、現在の活動に至っています。
生殖医療に関するデータは以前テレビでも放送していただきましたが、卵子凍結はもちろん、LGBTについて、DVや虐待についても研究しています。

__NHKのクローズアップ現代+「老化を止める?“卵子凍結”の真実 ~徹底調査!成功率は?リスクは?~」、私も拝見させていただきました! 女性たちの意識だけでなく、社会全体の問題のようにも思えたのですが・・・。

そうですね。昔は、専業主婦が当たり前という時代もありましたが、働く女性が増え、職業も多様化してきました。キャリアを築くことを考えて、結婚よりも仕事を優先する女性も増えています。このような女性たちは、子どもを持つことができなくなる不安を抱えています。

__しかし一方で、結婚し専業主婦をやっている女性の中にはDVを受けていたり、働きたくても働けないストレスを子供に向けてしまい虐待してしまっている人がいることなど、「結婚しても幸せになれていない方もいる」ということが浮き彫りになってきているとお話しされてましたね。

専業主婦だから、職業を持っているからと一概には語れないですが、社会が変わったことで女性の生き方も多様化し、妊娠と年齢との関係についての情報提供や教育が不足していたことに象徴されるように、社会の制度や人々の意識が追いついていないようにも感じています。

__なるほど。社会の変化と女性の働き方は大きく繋がっているんですね。NHKの番組では「いつか将来の子ども」のために、健康体な女性が卵子凍結をすることが紹介されていましたが、改めて「卵子凍結」について詳しく教えていただけますか?

卵子凍結は、もともとガン治療の影響で不妊になることを防ぐために実施されたものでした。最初は「仕事を優先したい」「今はパートナーがいない」などの理由で妊娠を先送りするために健康な方が行う治療ではなかったのです。その後、健康な女性の卵子凍結が海外では行われはじめ、2010年頃から日本でも一般の方にも認知されるようになりました。卵子凍結のことをまだ知らない女性も多い一方で、「手軽にできるのでは?」と思っている女性も多く、正確な情報を伝えていかなければと思っています。

__もっと前からあるように思っていたのですが、ここ10年くらいのトピックだったんですね。

そうなんです。2006年には日本でも初めての卵子凍結がガン患者さんに行われています。しかし、卵子凍結のことが広く知られたのは2012年にNHKで「産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~」という番組が放送され、そこでは実際に卵子凍結をする「健康な女性」も紹介されたことがキッカケです。番組の影響だけではないかもしれませんが、生殖医療を行う施設へ一般の方からの問い合わせも随分ありました。2012年の私たちの調査で、全国で少なくとも9施設が卵子凍結に対応していることも明らかになりました。
その後、2013年に一般社団法人日本生殖医学会によって「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」が作られ、ルールも議論されるようになりましたが、まだまだ本当に最近のことなんですよね。

__私も今回お話をお伺いするまで、実は「卵子凍結しようかな〜」なんて考えていたんです。

ちゃんとした知識を持った上で選択することが大事ですね。
医療技術は日進月歩で進んでおり、日本は世界的に見ても卵子凍結についてとても高い技術を有していると言えますが、もう一方で重要である女性が活躍できるための社会制度はまだまだ不十分な状況です。先にも述べましたが、ワークライフバランスやライフプランを考えた働き方の課題、男性がどこまで妊娠・出産に寄り添える社会なのか、本当に少子化を解決する取り組みができているのかなどなど、まだまだ課題はたくさんあります。

__なるほど。
また、不妊治療も女性任せ、子どもができたら子育ても女性任せというのではなく、性別にとらわれずに参加する必要があります。

__本当にそうですね! 社会全体での取り組みが必要なのですね。

社会全体で「子育て」をするには?

__もう少し女性と社会の関わりについてお伺いしたいのですが、キャリアと出産、妊活と仕事など二足以上のワラジを履かなければいけない女性はどうしたらいいと思いますか?

晩婚、未婚、非婚などの言葉があるように、結婚自体したくない女性もいる一方で、結婚したかったけれどもできなかった、結婚を迷っているうちに年齢を重ねてしまったという女性も増えています。中には不妊治療を何年も行ったけれども妊娠しないまま高齢になってしまう場合もあります。でも、例えば自身が妊娠することだけにこだわるのではなく、子育てをしたいのであれば養子をもらうという選択をしてもいいと思います。もっと里子や養子を受け入れる家族が増えてもいいなとも思っています。また、カップル単位、家族内のみで子育てを考えるのではななく、社会全体で子育てを助けられるようになればいいと思います。

__そのためにはどんな社会が必要なのでしょうか?

「多様性が認められる社会」になることが必要だと考えています。
「子どもを育てない女性は母親じゃない」、「今どき専業主婦じゃダメだ、働かないと」などと決めつけてしまう人もいます。「こんな子育て方法もあるんだな」「こんな母親もありだね」と多様性が認められるようになるといいですよね。これは、社会の制度で変えていくことも大事ですが、身近な人への心遣いだったり、私たちの身のまわりからでも変えていけることだと思いますよ。

__素敵! これは、中塚先生が取り組まれているLGBTの活動にも繋がってきますね。

そうですね。多様性を認めるという意味では共通しているかもしれませんね。レインボーパレードなどを通じて一般の方にも性的マイノリティの人々への理解が深まってきましたが、まだまだ知らない方も多いと思います。LGBTについて考えてもらえるよう岡山でもシンポジウムを行ったり、中学生や高校生にもより身近に感じてもらえるようにバッジを配ったりもしているんですよ。

__確かに学生のうちから、LGBTについて考えられるのはいいことですね!

若いうちからクラスの中で「ジェンダー」を意識することが非常に大切です。いろんな子がいる環境で育った人は大人になってからも多様性を認めやすいのですが、「男は男、女は女」「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」などというみんな同じ価値観で育ってしまうと、社会に出てから自分と違うものを受け入れにくくなるんですね。ジェンダーのことはもちろん、色々なことについて社会に出る前に、親、友達、先輩・後輩、その他色々な人々と話すことで多様な価値観に触れてもらいたいです。

第三者の意見も取り入れて多角的に考えるようにしよう

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__中塚先生がいらっしゃる岡山大学の学生さんとはどのような活動をされているのですか?

私の研究室では、学生が妊娠・出産・子育てはもちろん、デートやDV、LGBTなど様々な課題の研究に取り組んでいます。種々のトピッックスについて本音で語り合ってもらっている「リプロトーク」という動画を公開しているので、こういった動画を見ることを通じて学校や家庭で話すきっかけになれば嬉しいと思います。

▼ 中塚研究室リプロトーク① 妊娠・出産と年齢の関係(卵子の老化 不妊治療 生殖医療 高齢出産)

__私も4つめの「結婚をめぐる現状」について特に興味深く拝見させていただきました! 男の子と女の子が一緒に話をしているのが新鮮で楽しく拝見させていただきました。

ありがとうございます(笑)。

__そろそろ、最後の質問になってしまうのですが、これから「子どもが欲しい」と考えている方へメッセージをお願いします。

はい。例えばいろいろな病院で不妊治療を続けてきたけれども、子どもを持つことができない高齢のカップルなどから相談を受けることがありますが、自分自身が何を求めて「子どもが欲しい」と思っているのかを考えてもらっています。同じ子どもを持つということでも、自分の血の繋がった子どもを残したいのか、それとも子育てをする家庭を持ちたいのか、多面的に考えもらいます。
独身の女性に関しても、最近の卵子凍結の実情などのトピックスも正確な情報を誰かから教わる機会も少ないですし、視野が狭くなりがちです。本当は社会に出る前のライフプランを考える時期に色々な選択肢を知ってもらいたいとも思っています。
自分で「こうだ!」と思い込んでしまうのではなく、いろんな意見を聞いた上で、選択して欲しいです。ご自身ももちろんですが、これからお子様を迎えたいご夫婦でも、考えてもらいたいですね。

__そうですね。私も、卵子凍結のこともまわりの女性ともしっかり共有して正しい知識を身につけていこうと思います! 本当にお忙しい中、ありがとうございました!

中塚先生とお話する前まで、卵子凍結はもっと身近で気軽なものだと思っていました(実際にやってみようとまで思っていたので・・・)。しかし、お話を聞いてみて自分にとって何が必要かどうかを考えるきっかけをいただけました。きっと真剣に考えたことだったら後悔もしないだろうと思えましたし、多角的に考えて、第三者の意見ももらいつつ、自分の決断を出していこうと思えました。お忙しいところ本当にありがとうございました!(famit編集部:つるた)


岡山大学大学院保健学研究家 中塚研究室
【研究領域】
不妊症、不育症、流死産とグリーフケア、TLC(テンダーラビングケア)、悪性腫瘍と不妊・妊娠、子育て支援、就労妊婦の実態と少子化、マタニティハラスメント、産後クライシス、各種の合併症妊娠・分娩、虐待防止、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と生活習慣病、思春期、性同一性障害、LGBT、生殖医療と倫理、卵子凍結、卵子提供など

〒700-8558
岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
岡山大学医学部保健学科棟2F リプロカフェ
URL:http://www.okayama-u.ac.jp/user/mikiya/

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