不妊症看護認定看護師・教育者として不妊当事者を支える:聖路加国際大学・川元美里先生

Kawamoto_inter 不妊症看護に携わる看護師の教育に取り組む、聖路加国際大学の川元美里先生にインタビューをしてきました!川元さんご自身もこれまでに看護師、助産師として臨床現場で患者さんと接しており、現在では不妊治療や妊活に悩む一般市民向けの相談窓口の運営等を行っていらっしゃいます。今回は看護師をはじめとする妊活の専門家に相談をする大切さ、臨床現場からみた不妊治療や妊活についてお話しを聞いていきました。

男性の不妊治療への向き合い方とは?

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__川元先生、今回は宜しくお願い致します!早速ですが、先生は大学でどういったことをされているのですか?

こんにちは!私は普段、ここ聖路加国際大学にて看護師として活躍している人たちが不妊症看護の認定看護師としての資格を取るための教育を行っています。それだけではなく、不妊症看護に携わる看護師の生涯教育や看護師の方と協働して市民の方向けに妊活相談やおしゃべり会を実施しています。また、看護師を目指している学生に向けての指導もしています。

__認定看護師とはどのような看護師のことをいうのでしょうか?

「認定看護師」というのは「その分野・領域における高い技能と知識を持った看護師」のことを言います。聞きなれない単語なので、初めて聞く人も多いかもしれませんね。私はその中でも不妊症看護における認定看護師の育成・教育を担当しています。ちなみに不妊症看護の開講しているのは、全国でも聖路加国際大学だけなんですよ。そのため、不妊症看護を学びたい看護師が毎年全国からやってきます。

__ということは、先生は不妊症や妊活に携わる専門家を育てる人なんですね?

そうですよ!・・・まぁ、そんなに堅い風に考えないでください(笑) ちなみに私も7年ほど、不妊治療・妊活の現場で働いていました。

__先生が現場で感じたことがあったら教えていただけませんか?

やはり男女での結果に対する受け止め方の違いでしょうか。特に男性の場合には、ご自身の中で気持ちを整理する時間が必要なんだなぁということをこの時に知りました。

__具体的に男女ではどのように違うのでしょうか?

女性の場合は「とにかく話して、それと同時に気持ちを整理している」という方が多かったです。診療時に「今日は、結構ツライ内容の話をされていたな・・・」と思った時には、帰り際にお話をお伺いすることがあるんですが、女性はせきを切ったかのように話し出される方が多いですね。それに対して男性の場合は「あっ、はい・・・」という感じで、特に話しなどもされずに帰宅される方が多かったです。

__男性は結構あっさりとしているんですね。

最初は私も「大丈夫だったのかな?男性はそんなものなのかな?」って思っていました。でもそれは違ったのですよ。ある時診察に来られた男性から「お話を聞いてもらいたんですけど良いでしょうか?」と病院にお電話がありました。その男性は約2ヶ月前の診断時に「何かあったらお気軽にご相談くださいね」とお伝えした方だったのです。

__診察から電話まで随分と時間がありますね。

確かに間がありますね。実はその方が電話してこられたタイミングというのは、次回の診察の直前だったのです。男性の場合は精子を作る周期の関係で、次の診察まで約2.5〜3ヶ月空くのです。

電話から「前回、先生から言われた結果でよく分からない部分がありまして、また先生に質問してもいいのでしょうか?また、次の検査で不安なところがあるのですが・・・」と少ない口数の中にも、しっかりとご自身の中で考え抜かれたということが伝わってきました。その人と電話口で話しをしながら、「あっさりとしていたのではなく、自分の中で気持ちを整理している最中だったんだろうなぁ。そして自分なりに結果を受け止めたんだろう。」って感じました。

男性は、男性なりの言葉の受け止め方があり、目的を持たず、他者と体験を共有することは少ないように感じます。診察後にそのことについて多くを語らないことがあっても関心がないわけではなく、自分の中で受け容れて、準備をしてから他者と話をするのが女性と違うところです。

看護師として妊活に関わるってどんな気持ち?

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__先生がこれまで出会った患者さんの中で印象的な方はいらっしゃいますか?

そうですね・・・様々な患者さんと関わりましたが、ガン治療の影響で精子を作る機能が低下していた中、不妊治療に取り組んでいた40代の男性が特に印象深かったですね。

その患者さんは20代の前半に精巣ガンを患われたため、化学療法を受けていました。無事にガンは治りましたが、治療の影響で精巣に大きなダメージを負ってしまい精子が十分に作れない状態でした。そのため当時の医師からは「子供は難しいでしょう」と言われていたそうです。

__その男性と先生はどこでお会いになったのですか?

私とその患者さんが初めて会ったのは、泌尿器科の男性不妊外来に奥さんと見えた時です。当時、私は看護師として男性不妊外来の担当をしており、医師が診察をする時に側で作業をしていたり、治療に関することなどを患者さんたちとお話したりする中で、自然と顔見知りになりました。

検査結果から「すごく微量ではあるが、精子は作られている可能性がある」と判かったため、どうにか採取しようと試みるのですが、正直言って精子を取るのは大変難しい状態でした。その中でもどうにか精子を集め、体外受精や顕微受精を行っていきました。その結果、一度は赤ちゃんが10週まで育ったのですが・・・残念ながら流産をしてしまいました。

__そうだったのですね。先生はその時ご夫婦に対してどういった接し方をされたのですか?

実はこの患者さんが流産された時、「看護師としてどう関わっていけば良いのかな?」とこれまでの看護師生活の中で一番悩んだのです。大きな喪失を受けたばかりのご夫婦に次に向けた話をするのは違う。「頑張りましょう!」と励ますのもしっくりとこない・・・。どうやって関わっていけばいいのかな?って。

その中で「なにか言う」だけではなく、「一緒にそこにいること」が大事なのではないかとハタと気が付いたのです。言葉ではなく、気持ちで患者さんの側にいるといった感じでしょうか。

私はこのご夫婦との出会いを通して「看護師として何か言わないといけない訳ではないんだ。物理的ではないもののご夫婦の側にいて、『いつでも側にいますよ』という気持ちも大切なんだ」ということを学びました。

__ご夫婦はその後どうされたのでしょうか?

その後、無事に第一子を出産されましたよ。実はご夫婦とはその後もご縁があり、先の流産を受けて休止していた妊活を再開される時にもいくつか相談に乗ったり、アドバイスを伝えていたのです。

この時、聖路加国際大学で助教として働いていたため、当時のような看護師と患者という関係ではなくなっていました。そのため、不妊治療の専門家と治療に臨む当事者という形で自由にご夫婦に情報を伝えることができるようになりました。

もちろん専門家として重いことでもしっかりと伝えなくてはなりません。そういったことをしっかりと伝えられる知識があり、関係性を持つからこそ「どうすることが良いのか?」ということをご夫婦と一緒に考えていけるようになったのです。

__これまでの関わり方とは随分と変わりましたね。

そうですね。治療に関わる医療機関の看護師としてではなく、ただの看護師として関わることにより、治療に悩む気持ちや迷う気持ち、さらには治療を卒業するタイミングなど相談には中立的な立場をもちやすくなったと感じます。教育や市民の方向けの講座を通して、当時不妊治療に関わる看護師として感じていたこと、だけどその時に伝えられなかったことを今、みなさんに伝えていけるといいなと思っています。

医療者をもっと頼って!専門家と上手に付き合おう

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__最後に、これから妊活をはじめるカップルにメッセージをお願いできますか?

正しい情報を知るためにも、専門家やイベントをもっと利用してもらいたいです。今はインターネットで情報が手軽に入る反面、何を信用したら良いのか分からなくなっていることが多くなっています。聖路加国際大学で開催している妊活相談会でもそういった相談を受けることが多いです。

__信頼できる情報を自分で選ぶにはどうしたらいいのでしょうか?

看護師や医師といった医療者を積極的に活用することが大切となってくるのではないでしょうか。病院やクリニックだと「先生たちは忙しそうだから・・・」と相談をためらったり、悩みを打ち明けにくいと感じる人も少なくないと思います。ですが、せっかく医療機関を受診しているわけですから、そういう所の医療者をうまく使える環境が整うとよいと思います。

__医療者との接し方に悩む方にアドバイスをお願いできますか?

コツとしては、「今日はこれを聞いて帰ろう!」ということを予め決めた上で、診察を受けるということです。聞きたいことを考えておけば、焦らず質問をすることができますよね!

質問をするためには、みなさんにも不妊症やその治療に対する理解を自分で深めてもらう必要がでてきます。1人でどうしたら良いか分からない時には、大学や自治体で開催される不妊症や妊活のセミナーに参加をして専門家に相談をするのが効果的です。1人で悩んで質の良くない情報に惑わされず、ぜひ「専門家」に相談をしてもらいたいです。

もちろん医療者である看護師が患者さんの疑問に感じることや、変化に気がつくことはもっとも大切だと考えています。そのため私たちは看護師への教育を通して、患者さんへのケアや環境のあり方が不妊治療において大切であることを伝えていければと思います。

私たち看護師は、患者さんたちがより良い治療を受けるためのサポートが中心です。そういった患者さんたちの意思を尊重して、患者さんが納得ができる治療や妊活を行っていくことを助ける、そういったことができる看護師を増やすのが教育者としての使命だと考えています。

__川元先生、ありがとうございました!
不妊・妊活の当事者の気持ちの揺れ方、医療者の目線から見た不妊症に臨む男性の気持ちや受け止め方について川元先生にお話しをお伺いしました。医療者を始めとする、妊活・不妊症の専門家と積極的に関わり、活用をすることが大切だと感じました。専門家との接し方に悩んだ経験のある方は、ぜひ先生のアドバイスを実践してみてはいかがでしょうか?
(famit編集部:おすぎ)

聖路加国際大学 川元美里(かわもとみさと)
聖路加国際大学にて不妊治療・妊活に取り組む男女をテーマとした学術研究を行う。専門はウィメンズヘルス・助産学。それ以外にも看護学生のキャリア教育、不妊治療における認定看護師の認定・教育に関わる。当事者向けのイベントも定期的に学内で開催している。自身も看護師として10年以上のキャリアを持ち、不妊領域以外にも助産師として活躍した経験を持つ。

川元美里(聖路加国際大学HP)
聖路加国際大学 ウィメンズヘルス・助産学(Facebook)

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